伝統工芸と伝統的工芸品


2020.08.07

一般的に使われる伝統工芸という言葉。実は法律的には「伝統的工芸品」という名称が「伝統的工芸品産業の振興に関する法律(伝産法)」で定められています。「的」とは、「工芸品の特長となっている原材料や技術・技法の主要な部分が今日まで継承されていて、さらに、その持ち味を維持しながらも、産業環境に適するように改良を加えたり、時代の需要に即した製品作りがされている工芸品」という意味です。

引用元:一般財団法人 伝統的工芸品産業振興協会

https://kyokai.kougeihin.jp/traditional-c...

【国指定伝統的工芸品の認定基準】
1.主として日常生活で使われるもの
2.製造過程の主要部分が手作り
3.伝統的技術または技法によって製造
4.伝統的に使用されてきた原材料
5.一定の地域で産地を形成

イメージとしては、江戸時代には既に今のような製品が作られており、それが現在に至るまで続いているという感じです。法律で定められた国指定の伝統的工芸品以外にも、条例で定められた県指定のものもあります。滋賀県の国指定伝統的工芸品は、彦根仏壇、近江上布、信楽焼の3つです。つまり、優れた職人さんがいるだけでは産地認定はされず、「一定の地域で産地を形成」する必要があるのですね。

そう、今までの話はすべて産業という側面から工芸を捉えているのです。間違っても伝統工芸が文化的に価値があるから振興しよう!という発想にはなっていないことに注意が必要です。ここで、伝産法の目的を見てみましょう。

第一条 この法律は、一定の地域で主として伝統的な技術又は技法等を用いて製造される伝統的工芸品が、民衆の生活の中ではぐくまれ受け継がれてきたこと及び将来もそれが存在し続ける基盤があることにかんがみ、このような伝統的工芸品の産業の振興を図り、もつて国民の生活に豊かさと潤いを与えるとともに地域経済の発展に寄与し、国民経済の健全な発展に資することを目的とする。

うん、確かに国民の生活に豊かさと潤いを与え、地域経済を発展させ、国民経済も発展させるということが目的なのですね。つまり、伝統的工芸品という文脈はそもそも経済の文脈で語られており、工芸品がどのように活用されているのかという文化的な側面とは無関係に認定をされているということがわかります。

この「文化」と「産業」との距離感をきちんと認識した上で、どうやって「産業」が「文化」にアプローチできるのか、という部分を考える必要があると思っています。