ずっと考えている職人さんとの関係。いろいろと産地を調べましたが、どこも工賃が非常に安い。工芸品に限らないのですが、加工賃ビジネスではよほどのことがない限り値上げを取引先に飲んでもらうことが難しいという事情もあり、「コンビニでバイトした方がよほど稼げる」という、若手アニメーターを使い捨てる東京のアニメスタジオ(昔働いていたことがあります・・・)のような状況です。
結果として事業承継ができず、多くの産地が今に至っています。それくらい工芸品産地では販路を持っている事業者の力が強いことの証でもあるわけですが、かつてはそれぞれが販路を持ち、安定して職人さんにお仕事を割振ることで産地を形成していました。特に伝統工芸領域は職人1事業者ではできない、多段階の加工を経て完成する製品が多いため、とりまとめる卸の役割は大きなものがあります。
しかし、工芸品が本当に売れなくなって以降、職人さんの立場からすると、加工賃が安いまま据え置かれているため、いよいよ生活が成り立たない状況になっています。この状況から活路を見いだす方法はいくつか考えられますが、大きく考えて以下のようなものでしょう。
1 卸が企画機能を取り戻し、売れる企画を適正な利益配分で職人とともに作り上げる
2 職人さん自身が企画・卸機能を持つ
2 職人さん自身が企画・卸機能を持つ例もありますが、現実的には人手の関係や、そもそも完成品を売ったことがない場合は土地勘がなく、厳しいのが実情です。1 卸の復権を考えた場合、従来の人手が安かった時代の名残を残すことはもはやできないでしょう。
今後、人手はどんどん不足し、人材は貴重になってきます。不況業界には人が集まらず、給与が低いままでは淘汰は避けられません。そうだからこそ売れる商品を作り、工賃を上げ、優秀な職人さんを集める必要があります。と、いうことはそれだけ高い値段で売る必要があり、従来以上に難しいチャレンジが待っています。
当オフィスでも小さな一歩ではありますが、職人さんとコラボレーションして企画できる事例が出てきました。具体的な内容は後日オープン予定ですが、商流のポイントは以下の通り、売れたら売れただけ職人さんにも利益を還元するような契約形態としたことにあります。結局、製品は職人さんと一緒に作り上げるものなので、お互いの意見が反映されています。そうであれば、やはり運命共同体として、工賃とは別に、売れるときも売れないときも利益分配を検討すべきだと思うのです。
コンサルティングが口だけにならず、職人さんに信頼していただくには販路を持って行き、自分自身もリスクを負うこと。単なる商品棚を取ってくるバイヤーコンサルタントではなく、産地に入り込んで一緒に活動する中小企業診断士が必要です。